咲良は上手に説明できない
テクニカルライター・浅倉響との出会い

「わからない、何度読んでもわからない。つまりこれは、どういうことなの?」
横浜駅のアルバイト駅員、石川咲良は頭を抱えた。台風の影響でダイヤが乱れ、駅は大混乱に陥っていた。中央通路に設置されたホワイトボードには、各路線の運行状況が書かれていたが、それが何度読んでもわからないのだ。
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【現在の運行状況】
台風13号の接近に伴う暴風と大雨による影響でダイヤが乱れております。
東海道線は送電設備の異常により、横浜~品川駅間で運転見合わせ。横浜駅からの下り線は速度規制実施中
京浜東北線は大船~鶴見駅間は速度規制のうえ運行。鶴見~品川駅間は運転見合わせ
京浜急行線 速度規制実施中。なお、京急空港線は電柱の倒壊により運転見合わせ
東急東横線 速度規制実施中
みなとみらい線 通常運行 ……
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先輩駅員による手書きの案内は、正確を期すために細かく書かれ、かえって利用客を混乱させていた。中央通路にごった返す乗客たちは皆、戸惑っている。
身長174センチの咲良は目立つようで、ひっきりなしに声をかけられていた。「東京に行きたいんだけど、東海道線は止まってるの?」「品川にはどうやって行ったらいいんですか?」
いっぺんに聞いてこないで! 自分で考えてよ! と叫び出したい衝動に駆られたとき、一人の女性がホワイトボードの前に立った。黒髪のショートカット、チャコールグレーのカーディガンにパンツスタイルという落ち着いた装い。それでいながら、全身から「華」が滲み出ている。色白で睫毛が長く、「メガ美人」という言葉がぴったりのアラサー女性だ。
メガ美人はホワイトボード消しを掴み取り、書かれた案内をすべて消してしまった。ざわつく乗客たちをよそに、真っ白のボードに勢いよく書き始めた。




















