「後輩からキャリアについて相談されたものの、何をどう話せばいいのかわからない」「相手のためを思ってアドバイスしたのに、いまひとつ響いていない気がする」。誰かの成長を支えたいと思いながらも、どう関わればいいのか悩んだ経験のある人は少なくないだろう。
本書は、いま人材育成の手法として注目されるメンタリングを、基礎から実践まで体系的に学べる一冊である。著者は、日本におけるメンタリングの第一人者、池原真佐子氏。「メンタリングとは何か」から始まり、メンティとの信頼関係の築き方からアドバイスの仕方まで、豊富なノウハウが紹介されている。
メンタリングの大きな特徴は、コーチングのように相手から答えを引き出すのではなく、メンター自身の経験や知見をシェアすることにある。信頼関係を築き、相手の話に耳を傾け、その奥にある思いや課題を探っていく。そのうえで語られるメンターの経験が、相手の選択肢を広げ、背中を優しく押す。正解のない時代に、自分なりのキャリアを歩む勇気や自信を育む手法がメンタリングなのだ。
「華々しい成功談がなければ、メンターは務まらないのではないか」と思う人もいるかもしれない。だが本書によれば、メンティの心に響くのは、「完璧な成功体験」ではなく「失敗の経験」である。このメッセージに、メンターという役割へのハードルがぐっと下がる人も多いはずだ。
選択肢が多く、一人ひとりの価値観やキャリアが多様化する現代。部下や後輩との対話を一段深めたい人はもちろん、人材育成に携わるすべての人にすすめたい一冊である。