【必読ポイント!】 直感を裏切るデータ
比率の魔術

「年収1000万円以上、年収500万円〜1000万円未満、年収500万円以下のどの階層でも平均所得が上がっている。景気は良くなっているのだ」
果たしてこれは本当だろうか? わかりやすくするため、「高所得者」「低所得者」のふたつのカテゴリを用意し、その境界線を500万円としてみよう。この国民は4人からなり、所得は高い順に1400万円、600万円、300万円、200万円と仮定する。このとき「高所得者」は1400万円と600万円であるから、その平均は1000万円。「低所得者」は300万円と200万円なので平均は250万円となる。
ここから不景気で、全員の所得が2割減ったとしよう。すると1120万円、480万円、240万円、160万円となる。このとき「高所得者」は1人だけになるので、その平均は1120万円。そして「低所得者」が480万円、240万円、160万円の3人になったことで、平均は293.3万円となる。
すると全体の所得が2割減っているにもかかわらず、「高所得者」の平均は1000万円から1120万円に、「低所得者」の平均は250万円から293.3万円に上昇するのだ。
この例は極端に少ない人数に絞っているが、実際に不景気が深刻化する局面でも、各カテゴリの平均所得が上昇すると同時に貧しい人の割合が増えることは発生しうることが知られている。また逆に考えれば、各カテゴリの平均所得が低下していても、所得が高い人の割合が増えれば、全体としては平均所得は上がることになる。このような「集団全体と、集団を分割した場合の性質が異なる」という現象は、イギリスの統計学者であるE.H.シンプソンの名前から「シンプソンのパラドックス」と呼ばれている。
ベイズの定理

「健康診断を受けたところ、胃X線検査が〈要精密検査〉という結果だった。実際にがんの人が要精密検査とされる率は約90%だという。これは胃がんの可能性が非常に高いということを意味するのではないか。心配である」
要精密検査の時点で9割ががんなのではないか、いや、精密検査に回されても大丈夫だった人が意外といたかもしれない、実際にがんである確率は5割くらいだろうか……そう考えてしまうのも無理はない。
日本は教育水準が高く、スーパーマーケットの「30%オフ」「2割引」はほぼ理解されている。ところが中学校のカリキュラムで出てくるような食塩水の質量パーセント濃度計算だと、急に難しくなってくる。割合を把握するためには計算が必要であり、なんとなくの直感だけでは把握できない。
では、要精密検査の事例について考えてみよう。この問題は、次のような仮定として整理できる。




















