迷いの正体を知る
決断力は「自分の弱さと向き合う力」
私たちは、「決断力」という言葉からは「強さ」を、「優柔不断」という言葉からは「弱さ」を連想しがちだ。しかし、「弱さ」は誰にでも存在する。その弱さと向き合うのか、それともただ悩み続けるのか。その差が、決断できる人とできない人を分ける。つまり、「決断力」とは「自分の弱さと向き合う力」なのである。
ここでいう弱さとは、能力や性格の欠点ではなく、「失敗したくない」「どう思われるか気になる」「自信が持てない」といった感情に根ざしたものだ。そうした感情を無理に消そうとすることではなく、「今、自分は不安なのだ」と受け止めたうえで、「自分は何を大切にしたいのか」という基準に立ち返り、「次の一歩」を決める。この行動が本書のいう「決断」である。
では、自分の「不安」「未練」「罪悪感」といった感情と、どのように向き合えばいいか。まずは、自分の感じていることを具体的な言葉にすることから始めよう。
最初に、不安や未練を抱いている対象を書き出してみる。お金、時間、人間関係、自分に対する評価などが考えられるだろう。
次に、それらに対してなぜ不安や未練を感じるのかを掘り下げる。「なぜ私はそう思うのだろう」と問いを重ねながら書き出してみよう。
たとえば、著者は3年にわたる中国赴任を終え、「あと半年で日本に帰れる」という時期に、中国企業への転職話が舞い込んできた。当初は「どう断ろうか」と考えていたものの、一方で、少しだけ気持ちが揺れている自分がいることにも気づいた。
そこで自身の気持ちを書き出してみると、多くの不安や罪悪感が見えてきた。しかし、その感情のさらに奥には、「やってみたい」という本音があった。また、日本に帰りたい理由を掘り下げると、「楽をしたい」という気持ちがあることにも気づいた。そして最終的に、中国企業への転職を選択することとなった。
決断を支える「基準」と「材料」

良い決断ができるかどうかは、「決断の基準が明確かどうか」と、「決断に必要な材料が十分にそろっているかどうか」で決まる。基準が明確でも材料が不足していれば、独善的な判断に陥りかねない。一方、材料が豊富でも基準が曖昧であれば、どの選択肢も魅力的に見えてしまい、迷いや判断のブレを招く。
つまり、「決断力」とは「材料を集める力」と「価値観を言語化する力」の掛け合わせである。迷わず決断できる人は、例外なく「自分なりの基準」を持っている。
では、その価値観をどのように言葉にすればいいか。次のパートでは、より良い決断と迷いの少ない決断を実現するための「基準」のつくり方を、4つのステップで紹介していく。




















