知れば知るほどおもしろい お米のはなし
知れば知るほどおもしろい お米のはなし
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知れば知るほどおもしろい お米のはなし
ジャンル
出版社
出版日
2025年06月05日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

誰もが毎日のように食べてきた「ごはん」。パンや麺類、はたまた完全栄養食などの新たな選択肢に押されて主食としてのお米の存在感が薄れつつある一方で、令和の米騒動が起こるなど、日本人とお米の関係は今なお深い。本書は、そんなお米の本当の姿を、歴史や文化の視点から味わう一冊である。

著者の柏木智帆氏は、新聞記者として農薬や化学肥料を極力使わずに米づくりを行う取り組みを取材したことをきっかけに、「お米は単なる農産物ではない」と気づき、お米の世界にのめり込んでいった。営農組合に転職し、2年目には田んぼを借りて無農薬・無肥料での米づくりを開始。キッチンカーでおむすびを販売していた時期もあるという。現在は米農家としての経験を活かし、米食文化の再興とお米の消費量アップを目指す「お米ライター」として活動している。

本書の最大の魅力は、柏木氏の現場感覚に裏打ちされたトピック選びと解説だろう。「日本に水田稲作が伝わったのはいつ?」「班田収授法では、なぜお米が税に選ばれた?」「減反政策は何のため?」「令和の米騒動はなぜ起きた?」――こうした素朴な疑問に対して、本書はわかりやすく具体的に答えていく。

毎日のようにおいしいお米を食べていながら、その背景を何も知らない――そんな人にこそ、本書を手に取ってほしい。読み終える頃には、食卓に並ぶ一膳のごはんも、昼休みに食べるおにぎりも、きっとまったく違って見えてくるはずである。

著者

柏木智帆(かしわぎ ちほ)
1982年、神奈川県生まれ。大学卒業後、神奈川新聞社に入社、編集局報道部に配属。新聞記者として様々な取材活動を行うなかで、稲作を取り巻く現状や日本文化の根っこである「お米」について興味を持ち始める。農業の経験がない立場で記事を書くことに疑問を抱くようになり、農業の現場に立つ人間になりたいと就農を決意、8年間勤めた新聞社を退職。無農薬・無肥料での稲作に取り組むと同時に、キッチンカーでおむすびの販売やケータリング事業も運営。2014年秋より都内に拠点を移し、お米ライターとして活動を開始。2017年に取材で知り合った米農家の男性と結婚し、福島県へ移住。夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送りながら、お米の消費アップをライフワークに、様々なメディアでお米の魅力を伝えている。また、米食を通した食育にも目を向けている。
執筆記事は「お米沼にようこそ」(SMART AGRI)など多数。また、NHK「あしたも晴れ!人生レシピ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などの各種メディアにも出演。
米・食味鑑定士としてお米の各種コンテストの審査員も務める。2021年から「おむすび権米衛」のアドバイザーに就任。

本書の要点

  • 要点
    1
    お米は富や権力を生み出し、常に争いの火種となってきた。
  • 要点
    2
    1971年からは、米の在庫過剰を背景に、本格的な減反政策が実施されるようになった。
  • 要点
    3
    戦後、お米中心の食生活が急速に姿を変えていった背景には、アメリカ主導の食の欧米化政策があった。
  • 要点
    4
    2024年の夏、米の品薄と価格高騰が社会問題化し、「令和の米騒動」と呼ばれる事態が発生した。その要因は、供給と需要の双方にあった。

要約

【必読ポイント!】 お米でたどる日本の歩み

水田稲作の伝来と広がり

「水田稲作(田んぼでの稲作)」は、縄文時代晩期までに中国から日本へ伝わったと考えられている。

弥生時代に稲作が広まると、お米や土地、水を巡る争いが生じ、各地に多くの富(お米)を手に入れた「豪族」が生まれた。

権力者たちは自らの力を示すため、生前から巨大な墓(古墳)を築かせた。古墳の建設には膨大な労働力と食料が求められたため、当時の権力者たちは人々を動員し、土地を開墾して田んぼを広げていった。

日本最大の古墳は、大阪府堺市の「大仙陵古墳」である。この古墳の工事期間は16年にも及び、ピーク時には1日に3000人もの人々が働いていたと推定されている。

大規模な古墳づくりに従事した人々の食を支えるため、米の生産量は増加し、古墳を囲む堀が田んぼの用水路として活用されるなど、古墳は結果として稲作と米食文化の発展を後押しする役割を果たした。

中央集権とともに始まった「お米=税」制度
koichi/gettyimages

701年、日本で最初の体系的な法律「大宝律令」が制定された。それ以前は各地の豪族が土地や人々を支配していたが、この法律によって、政治権力は中央政府に集中することとなった。

そして、土地と人々を国が管理するという「公地公民」の方針のもと、お米を税として納める「班田収授法」が義務化された。6歳以上の男女1人につき、「口分田」と呼ばれる一定面積の田んぼが与えられ、そこで収穫されたお米を納める仕組みである。

お米が税に選ばれた背景には、寒冷な東北地方でも稲作が可能だったこと、栄養価の高さ、もみのままで長期保存ができたことなどがあったようだ。この時期に始まった「お米=税」という制度は、1873年の「地租改正」で税が米から金銭に切り替わるまで、およそ1200年にわたり続いた。

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要約公開日 2025.07.18
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