人的資本経営とは人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方である。人材をコストではなく「価値を生み出す資本」として捉え、効果的に投資することでリターンを生み出そうという考えに基づいている。
近年、なぜ人的資本経営が重要視されるようになったのか。そのきっかけの1つは、2008年のリーマン・ショックである。リーマン・ショックの背景には、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの社内ガバナンスの脆弱さがあったと言われる。これにより、財務情報のみで投資判断をする危険性が周知され、人材投資への関心が高まっていった。
ESG投資も関係している。環境(Environment)や社会(Society)に配慮して、適切にガバナンス(Governance)されている企業に投資する「ESG投資」。このうち、社会とガバナンスが人的資本に関わっているため、投資の観点から人的資本を重視する声が高まっている。
近年は、外国人投資家による人的資本への取り組み要請も増えている。また、コーポレートガバナンス改革の推進によって、企業の中核人材における多様性の確保が取り入れられた。
2023年3月期からは、「有価証券報告書」で人的資本の情報開示が義務化されている。全ての上場企業が「ダイバーシティ」、その第一歩としての女性活躍推進に対して、本気で取り組まなければならないのである。
人的資本経営の推進に欠かせないのが、ダイバーシティ(多様性)だ。ダイバーシティは、単に多様な人材が存在するだけではなく、「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)」として捉える必要がある。
DEIの推進には、「女性」「育児期」社員から始めるといい。その理由の1つは、女性は社会的マイノリティの中のマジョリティであるため、ダイバーシティを計る第一のバロメータとなるからだ。人数が多い属性でさえも活躍できない環境ならば、当然、他の属性の人達の活躍も難しい。
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