教育経済学とは、教育を経済学の理論や手法を用いて分析する応用経済学の一分野だ。この教育経済学を学んだ著者が、教育を議論するときに絶対的な信頼を寄せているものがある。それが、「データ」である。大規模なデータを分析することで、子育て中の保護者や学校の先生が見えていないことがわかることがあるのだ。
教育評論家や子育ての専門家と呼ばれる人達の主張は、科学的な根拠に乏しいことがある。そのために「なぜその主張が正しいのか」という説明が十分になされないことが多い。
経済学の知見を取り入れた教育にかんする発見は、そうした評論家や専門家の指南やノウハウよりもはるかに価値がある。本書ではそうした「知っておかないともったいないこと」を紹介していく。
子育てに成功した母親の体験談は多くの人に好まれる。そうした体験談ではほとんど触れられていないが、多くの研究で子どもの学力に大きな影響を与えると示された要因がある。それが親の年収や学歴である。
文部科学省の調査によると、親の学歴や収入は子どもの学歴に強い影響を与え、東京大学ともなれば親世帯の平均年収は約1000万となっており、世帯収入が950万円以上の学生の割合は約57%を占めている。2012年の「民間給与実態調査」における給与所得者1人あたりの平均年収が408万円、「家計調査」の2人以上勤労者世帯の平均年収が623万であることを考えれば、東大生の親の収入がいかに突出して高いかがわかる。
子どもを全員東大に入れた、というような話は例外中の例外であるが、そういう例外ほどかえって注目されてしまう。教育経済学が信頼を寄せるのは、こうした一人の個人の体験記ではなく、膨大な個人の体験から得られた規則性なのである。
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