

会議で「何か意見は?」と聞かれても、本当に思っていることではなく、無難なことばかり言ってしまう。 本当は違和感があるのに、「空気を悪くしたくない」と黙ってしまう。 そんなふうに、職場で言いたいことを飲み込んでしまう経験はありませんか。
一方で、チームの雰囲気を良くしたいと思っているのに、なぜか会議では発言が少ない。 「何でも言っていいよ」と伝えているつもりでも、部下は本音を話してくれない。 マネジャーとして、どうチームを運営すればいいのか悩んでいる人も多いでしょう。
こうした「言えない」「聞けない」「どう振る舞えばいいかわからない」状態は、個人の性格や勇気の問題というより、チームや職場に心理的安全性が十分に確保されていないサインかもしれません。
心理的安全性の高い状態とは、安心して意見を言えて、失敗や違和感を共有しても不利益を被らない状態のことを指します。近年では、Googleの研究をきっかけに、成果を出し続けるチームに欠かせない要素として注目されるようになりました。
そこで本記事では、心理的安全性を深く理解し、チームの心理的安全性を高めたい人におすすめの本を厳選しました。定義や考え方を理解できる入門書から、すぐに使えるフレーズ集まで、初心者でも読みやすく、現場で役立つものを紹介しています。気になるものがあればぜひ読んでみてください。


会議で本音を言えない。
気になることがあるのに、波風を立てたくなくて黙ってしまう。
そんな空気の中で働くしんどさを感じている人にまず読んでほしい、心理的安全性の定番書といえば『心理的安全性のつくりかた』(石井遼介著)です。
本書は、Googleの研究などを起点に注目されてきた「心理的安全性」を、日本の職場文化に合わせて理論と実践の両面から体系化した一冊。心理的安全性とは、単に「和気あいあいとしている状態」ではなく、高い仕事の基準を前提に、率直な意見や異論を安心して出せる状態だと定義されています。
よくある誤解が、「心理的安全性=ヌルい職場」というイメージです。本書ではこれを明確に否定し、次のマトリクスで整理しています。
・心理的安全性が低く、仕事の基準も低い「サムい職場」
・心理的安全性は低いが、基準だけ高い「キツい職場」
・心理的安全性は高いが、基準が低い「ヌルい職場」
・心理的安全性も仕事の基準も高い「健全な職場」
目指すべきなのは心理的安全性も仕事の基準も高い「健全な職場」であり、安心と緊張感が両立していることこそが「心理的安全性の高い状態」だと示されています。
また本書では、心理的安全性を高める因子として「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つが示されています。
・「話しやすさ」因子:さまざまな情報を臆せず共有できること
・「助け合い」因子:お互いに助け合える環境のこと
・「挑戦」因子:結果にかかわらず、挑戦を歓迎できる環境
・「新奇歓迎」因子:社会や業界の常識にとらわれず、メンバー一人ひとりの強みや個性、新しい視点、発想を受け入れる環境のこと
これらの4つの因子は、日々の行動や声かけの積み重ねによって育つものだと説明されています。
さらに、初心者にとって重要なのが、「心理的安全性は役職者だけの責任ではない」という視点。著者は、リーダーでなくても自分の行動を少し変えるだけで、チームの空気に影響を与えられると述べています。感謝を具体的に伝える、意見を言ってくれた人に敬意を示す、問いかけを工夫する……こうした小さな行動が、安心して話せる土台になります。
『心理的安全性のつくりかた』は、心理的安全性の本をまず一冊読みたい人や、職場で萎縮してしまう人、チームの空気を少しでも良くしたい人におすすめしたい一冊。心理的安全性の本質をしっかり学べる定番の一冊です。


心理的安全性を高めたいと思っても、「甘やかすことになるのでは?」「厳しいフィードバックができなくなるのでは?」と不安を感じる人は少なくありません。そんな誤解や迷いを一つずつ解消してくれる実践書が、『心理的安全性 最強の教科書』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著)です。
本書は、Googleなどでの経験を持つ著者が、心理的安全性をマネジメントの具体行動レベルまで落とし込んで解説した一冊。心理的安全性とは「仲良しで居心地がいい状態」ではなく、成果を出すために、率直な意見や悪い報告を安心して共有できる状態だと明確に定義されています。
本書で特に印象的なのが、フィードバックの考え方です。問題が起きたとき、すぐに解決策を指示するのではなく、まずは「悔しかったんだね」「不安だったんだね」と感情を受け止める対話から始めることが、心理的安全性を守る第一歩だと述べられています。感情を無視したまま正論や解決策だけを返すと、相手の悔しさや悲しさを軽んじたように受け止められてしまい、「自分は見られていない」という不信感につながるからです。
また、心理的安全性を高めるうえで欠かせない要素として、「自己認識(自分の価値観・好み・考え方を理解する)」と「自己開示(それを言葉にして周囲に伝える)」の重要性も繰り返し語られます。特に、マネジャーが率先して自己開示することでメンバーも安心して意見を言えるようになるという指摘には、ハッとする人も多いでしょう。
『心理的安全性 最強の教科書』は、厳しさとやさしさの両立に悩んでいるマネジャーや、チームの空気と成果を同時に良くしたいマネジャーにおすすめの一冊です。まさに教科書のように、明日から取り入れたい知識がしっかり身につきます。


チームの心理的安全性を高めたいけれど、具体的に何から変えればいいかわからない……そう感じている人におすすめしたいのは『心理的安全性をつくる言葉55』(原田将嗣著、石井遼介監修)です。
本書の出発点はとてもシンプルで、チームの心理的安全性は、日常で使う言葉によって大きく左右されるという考え方。大胆な制度改革や高額の研修を行わなくても、普段の声かけを少し変えるだけで、安心して発言できる空気はつくれると述べられています。
本書では、心理的安全性を構成する要素として、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という4つの因子が示され、シーンごとに、それぞれを高めるための具体的なフレーズが55個紹介されています。
たとえば、会議を活性化させる言葉として挙げられるのが「この場の心理的安全性は、私が担保します」。このフレーズは、4つの因子のうち、話しやすさ因子を高めるフレーズです。
会議で意見を募る際、「なんでもいいので意見を出してください」ではなく、「この場の心理的安全性は私が担保します」と宣言するだけで、発言への心理的ハードルが大きく下がると説明されています。
また、1on1で使えるフレーズとして注目したいのは「バッドニュースとグッドニュースを教えてください」。これは助け合い因子を高める言葉です。
1on1で「なんでもいいから話したいことを話して」と問いかけると、部下からは「特にありません」と言われてしまいがち。そこで「ここ1カ月のバッドニュースとグッドニュースを教えてください」と言ってみると、メンバーの功績に気づけたり、業務改善のヒントが得られたりするでしょう。
本書が優れているのは、単なるフレーズ集ではなく、「どんな場面で」「なぜその言葉が効くのか」を丁寧に説明している点。具体的なシーンが浮かぶつくりなので、明日の仕事からすぐに使えるでしょう。実際の会話例も豊富で、明日からそのまま使える実用性があります。
『心理的安全性をつくる言葉55』は、心理的安全性を高めるアクションが知りたい人におすすめの一冊です。


心理的安全性を高めたいと思っていても、「よかれと思って言った一言が、逆効果だった」「正論のつもりが、相手を黙らせてしまった」……そんな経験があるリーダーやマネジャーに、強くおすすめしたい一冊が『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』(田中弦著)です。
本書は、実際の職場シーンにおいて、どんな声かけが心理的安全性を高め、どんな言葉がそれを壊してしまうのかを、100例も示した一冊。大きな特徴は、NGな声かけと、その声かけの言い換え例が対になって提示されている点です。
たとえば、メンバーが失敗した場面で「もう迷惑をかけないでね」と声をかけると、罪悪感が強くなり、リーダーに恐怖心を抱いて、心理的安全性は一気に下がります。一方で、「次に同じ問題にぶつかったら、もう一人で解決できるよ」と問いかけることで、失敗を学習の糧として扱う空気が生まれると説明されています。
メンバーに苦手な仕事を助けてもらう機会があれば、お礼だけでなく、「私が苦手な仕事を、君は自然にできてすごいなあ」などと褒めることが勧められています。このフレーズにより、「リーダーにも苦手なことがある」「リーダーも助けられる側になることがある」と示せて、リーダーとメンバーのフラットな関係性を作れるのです。互いに尊重し合い、協力し合う関係性に発展し、組織の心理的安全性はおのずと高まっていくでしょう。さらに、メンバーにとっては「リーダーを助けて」「組織に貢献した」という実感が、自己肯定感アップにつながります。
また、逆に、メンバーからリーダーに対する「心理的安全性を高める声かけ」も紹介されています。たとえば、リーダーが落ち込んでいたり、なかなか判断を下せずに迷っていたりするときには、いくら励ますつもりであっても「リーダーなんだから、しっかりしてください!」というのはNG。リーダーに理想像を押しつけ、萎縮させてしまいかねないからです。
そんなときに望ましい声かけは「私は、あなたがリーダーで良かったと思っています」。この声かけなら、リーダーを励ましつつ、相手の自信につなげられます。
本書ではほかにも、進捗状況の報告を依頼するとき、ミスを報告されたとき、ミスやヒヤリハットを振り返るとき、メンバーから業務量について不満の声が上がったとき、追加業務を頼んだらイヤがられたとき、若手社員が小さな仕事を積極的に引き受けているときなど、「あるある」な場面ごとに使える声かけが100個紹介されています。
心理的安全性は、意識のもちかたではなく、日々の声かけでも左右されることを教えてくれる本書。今日からすぐ、チームの空気を変えていきたい人に、本書をおすすめします。


心理的安全性の高い職場をつくりたいという気持ちは確かにあっても、「この場面では、どう振る舞うのが正解なんだろう?」と迷ってしまうことは少なくありません。そんな日常のモヤっとした判断を整理してくれる一冊が、『何でも言える職場はどっち?』(池本克之著)です。
本書の特徴は、心理的安全性を「二択の問い」で学べる点。
「挨拶は自分からする? 自分からしない?」「失敗すると気分が落ち込む? 落ち込まない?」「失敗したら、冷たい目で見られそうで怖い? 怖くない?」など、職場で実際に起こりがちなシーンを104問提示しながら、どちらが心理的安全性を高める行動なのかを考えさせてくれます。
本書で繰り返し示されるのは、心理的安全性の高い職場=「上司、部下のどちらも言いたいことが言える空気感がある状態」であるという定義。部下から上司へも率直な意見が言え、上司から部下へも必要な指摘ができる。そんな双方向の安心感がある職場こそが、心理的安全性の高い場だと説明されています。
また本書では、心理的安全性が低くなる原因には、「無知、無能、邪魔、ネガティブ」の4つがあるとしています。そして、この4つとは無縁でいられるよう、まずは周囲に挨拶する、挨拶を返すことからはじめようとアドバイスされています。挨拶には「自分は敵ではありません」というメッセージが含まれるからです。
『何でも言える職場はどっち?』は、心理的安全性を感覚的に理解したい人、正解・不正解を具体的に知りたい初心者、職場の人間関係でモヤモヤしている人におすすめの一冊。「どっち?」という問いに答え続けるうちに、安心して話せる職場の「判断軸」そのものが身につくはずです。
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