
世界を変えた発明・発見がわかる本7選
人類に大きな貢献を果たした個人や団体に贈られる、世界で最も権威ある賞のひとつ「ノーベル賞」。その始まりは、ダイナマイトを発明したスウェーデンの発明家で実業家のアルフレッド・ノーベル(1833–1896)が、自らの遺言で賞の設立を指示したことにさかのぼります。 現在では、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞、経済学賞の6部門があり、毎年10月におよそ1週間をかけて受賞者が発表されます。その期間は「ノーベル賞ウィーク」と呼ばれるほど、世界中が注目する一大イベントとなっています。 本記事では、これまでノーベル賞を受賞した人たちの著作などから7冊を厳選して紹介します。受賞者の思想や研究の背景を知ることで、ノーベル賞が持つ意義をより身近に感じられるはずです。
ライター・矢羽野晶子


益川敏英・山中伸弥という、2人のノーベル賞受賞者が語り合う刺激的な一冊。
益川氏は2008年に「CP対称性の破れ」の起源を発見してノーベル物理学賞を受賞。そして山中氏はiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。本書では、両者が「世紀の大発見」に至るまでの道のりや思考、研究の裏話などをざっくばらんに語り合います。
印象的なのは、成功に必要な要素として挙げられる「Vision & Hard Work」という言葉。高い目標を掲げ、忘れずに努力を続けることが大切だと説きます。日本人は「努力そのもの」に満足しがちですが、本当に必要なのは目標を意識し続け、着実に行動することだと強調しています。
偉業を成し遂げた2人の考え方は、研究者だけでなく、ビジネスや日常生活にも応用できるでしょう。


南米コロンビア出身で「魔術的リアリズムの旗手」と呼ばれる文豪ガブリエル・ガルシア=マルケス。『族長の秋』『コレラの時代の愛』などの名作を生み出し、1982年にノーベル文学賞を受賞しました。
その代表作が『百年の孤独』です。物語は架空の街・マコンドを舞台に、創設者ホセ・アルカディオ・ブエンディアと妻ウルスラから始まるブエンディア家の100年にわたる歴史を描きます。世代を重ねるなかで、同じような名前を持つ子孫たちが登場し、恋愛や政治闘争、魔術的な出来事が織り込まれ、マコンドの街もまた盛衰を重ねていきます。
46言語に翻訳され、5000万部を売り上げている世界的なベストセラー。2024年にガルシア=マルケスの没後10年として文庫化や映画化が進み、リバイバルブームを迎えました。文庫版にして672ページの超大作。まずは要約でそのエッセンスに触れてみてはいかがでしょうか。


貧困解消に対する実践的なアプローチが評価され、2019年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者のアビジット・V・バナジーとエステル・デュフロ。本書『貧乏人の経済学』は両氏によって書かれた一冊で、途上国支援に力を入れるビル・ゲイツの愛読書としても知られています。
「途上国における貧困問題」と聞くと、まず「飢餓」をイメージするのではないでしょうか。しかし本書によると、「貧困者はお金をもらっても、必ずしも食料を買うとは限らない」とのこと。たしかに食べ物は生きる上で必要不可欠ですが、日々に楽しみが少ない貧困者たちは、それよりも娯楽や祭事にお金をかける傾向があるとのことです。
貧困問題を解決するには、“非支援者”の実態を知ることが欠かせません。ただ金銭や食料を送るのではなく、本当に効果のある援助をすること。本書を読むことで、その手がかりをつかめるのではないでしょうか。


2017年のノーベル経済学賞受賞者であるリチャード・セイラーが共著で贈る『NUDGE 実践 行動経済学(完全版)』。「ナッジ(NUDGE)」とは、強制や禁止をせずに本人の自由を尊重しながらも「よりよい選択」を後押しする仕掛けを指します。
人間は認知バイアスなど思考のクセにとらわれやすく、意図せず不合理な選択をしてしまうことがよくあります。こうした判断のブレを前提とした上で、本書ではより良い選択をするための「選択アーキテクト」の必要性を強調します。
その手段としては「初期設定を工夫する」「選択肢の提示の仕方を変える」などが考えられますが、具体的には「スーパーの手に届きやすい棚に果物を陳列することで、人々の健康を促進する」というのも、選択アーキテクトのひとつでしょう。こういった小さな仕掛けが、より健全な行動へ導くきっかけになるからです。
本書は行動経済学の入門書としてもぴったりの一冊。興味のある方は、ぜひ手に取ってみてください。


「消費、貧困、福祉についての分析」が評価され、2015年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートン教授。本書は彼の著作の中で唯一、日本語訳が発表されている書籍です。
本書のタイトルにもなっている「大脱走」とは、「人類が貧困と早すぎる死から逃れ、生活水準の改善を果たしてきたこと」を指しています。ただ、「脱走」が成功したのは一部の先進国であり、多くの開発途上国はいまも逃れるには至っていません。
さらに本書では、援助国による経済支援が貧困の原因を作っていることも指摘します。通常、国際援助は二カ国の政府間によって行われますが、支援金が被援助国の政府高官の懐に入り、本当に援助が必要な層にゆきわたらないケースも少なくありません。政府は自動的に支援金を得られるため、国民に対する課税の努力をせず、汚職がさらに進むという悪循環に陥ってしまうのです。
開発途上国が経済的に発展し、健康や幸福度などの生活水準を上げるにはどうすればいいのか。本書を読んで考えてみてはいかがでしょうか。


2002年にノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』。私たちは様々なことを「自分で決めている」と思い込んでいますが、本書では「その限りではない」ことを指摘し、人間の意思決定にまつわる真実を解き明かします。
本書によると、人間には2つの思考モード「システム1(速い思考)」と「システム2(遅い思考)」が備わっているといいます。システム1(速い思考)は、自動的に高速で働く思考。一方のシステム2(遅い思考)は、複雑な計算など頭を使わなければできない知的活動を行う思考です。たとえば、「突然聞こえた音の方角を感知する」のはシステム1で、「がやがやした部屋の中で、特定の人の声を聞き分ける」のはシステム2。両者は共に働いていますが、システム2は、システム1が処理しきれないときのみ稼働するそうです。
ビジネスや日常生活で、より良い意思決定をしたい人におすすめの一冊です。


1976年にノーベル経済学賞を受賞した、アメリカの経済学者ミルトン・フリードマン。自由主義経済の重要性を説き、一貫して政府による市場経済への介入を批判し続けたことから「市場原理主義者」と呼ばれてきました。20世紀の経済学に大きな足跡を残した一方で、「冷血なマネタリスト」といったイメージが先行し、日本での評価は必ずしも高いとはいえません。
本書は、そうした偏った見方を超えてフリードマンの功績を正しく捉えようとする一冊です。氏の生い立ちから思想、そして経済提言が世界に及ぼした影響などを丁寧に描き出します。
さらに、フリードマンは日本に興味を持ち、日本経済を研究対象としていました。日本は少子高齢化などの課題を抱えながらも、「きわめて効率的で生産的な社会」と評価していたといいます。
フリードマンの経済論に触れることは、現代日本が直面する問題を考える上で貴重な示唆を与えてくれるはずです。