
flier businessを利用していただいている品川リフラクトリーズ株式会社。藤原弘之社長にflierの要約がある本の中から、おすすめの5冊を紹介していただきました。国際情勢の今を知るための必読書、データ分析の面白さがわかる本など、素晴らしい本が並びます。ご一読ください。
社員におすすめしたい本はたくさんありますが、その中からflierに要約が載っている本を5冊ピックアップしました。
まずは『ヤバい経済学』。経済学というと、為替やGDP、失業率などと難しい用語が飛び交うイメージがあるかもしれません。ですが、この本はそうした用語の解説ではなく、一見経済現象には見えないような事象の謎を、計量経済学的な分析で解き明かしていきます。
たとえば、日本の大相撲で八百長があるかどうかを調べた統計分析の例が紹介されています。大相撲10年間のデータを調べたところ、千秋楽に7勝7敗の力士が8勝6敗の力士と対戦すると、7勝7敗の力士が8割近い確率で勝つというデータが出た。これは八百長の可能性を示唆している……というように、実に読みやすくて興味深い事例が目白押し。私のイチオシの本です。
![ヤバい経済学 [増補改訂版]](https://static.flierinc.com/summary/804_cover_300.jpg)
![ヤバい経済学 [増補改訂版]](https://static.flierinc.com/summary/804_cover_300.jpg)
データ分析というと無味乾燥なイメージがありますが、実はとてもスリリングで面白いもの。『ヤバい経済学』の白眉は、1990年代にアメリカの犯罪発生件数が急減した理由を統計的に分析した話です。当時の一般的な見方としては、ニューヨーク市長だったジュリアーニ氏の「割れ窓理論」で治安が良くなったとされていました。つまり、小さな犯罪を徹底的に取り締まることで治安が回復したという見方です。
ところが、社会学者である本書の著者たちは、他の可能性も探ろうとさまざまな仮説を立てて、因果関係分析を進めていきました。すると、犯罪件数急減の最も大きな説明変数は、1970年代に最高裁が人口妊娠中絶を合法化したことであるという結論を導き出したのです。当時、人工妊娠中絶の合法化は、アメリカの宗教的価値観もあって大変センセーショナルな話題になりました。ですが、社会科学の分析によって、合法化で安全な中絶ができるようになって望まない出産が減ることが、犯罪を減らすことにもつながることが明らかになりました。
こうした意外な結果を解明していくのも、社会科学のデータ分析の醍醐味ですし、社員にもそうした面白さをぜひ感じてもらいたいですね。
次に紹介したいのが、2024年にノーベル経済学賞を受賞したアセモグル氏らの共著『国家はなぜ衰退するのか』です。邦題は少し誤解を招きやすいのですが、原題は『Why Nations Fail』。つまり、「なぜ国家は間違ってしまうのか」という話です。例えば、北朝鮮と韓国の事例が挙げられていて、資源が豊かにあった北朝鮮が、なぜ今のような貧しい経済状況になり、一方で資源に恵まれない韓国がなぜ経済的に発展したのか、といった話が紹介されています。
その背景には「収奪的な政治経済システム」と「包括的(インクルーシブ)なシステム」という2つの概念があります。収奪的なシステムのもとでは、独裁者や限られたエリートが富を吸い上げてしまう。大衆に挑戦の結果が与えられず、国が発展しない。一方で、包括的、さらにいうと包摂的なシステムのもとでは、万民にチャンスが与えられ、所有権も守られ、挑戦した結果きちんと報酬が与えられる。こうしたインセンティブが多くの人に与えられる国家は経済が発展するんです。
これを歴史的事実やデータをもとに丁寧に解説しているのが本書の魅力です。やはり自由な経済活動や人々の権利を守ることが重要だと理解でき、とても勉強になります。



3冊目は、ジョセフ・E・スティグリッツ氏の『プログレッシブ キャピタリズム』。2001年にノーベル経済学賞を受賞していて、私が最も好きな経済学者の一人です。本書では、アメリカの一部の富裕層が経済全体の富のほとんどを独占している現状を分析しています。いわゆる「上位1%」が富を吸い上げて、残りの99%の人々の所得がほとんど増えていないという話です。これはアセモグルの言う搾取的なシステムに通じるものがあって、庶民の富が特権層に奪われていく現実を鋭く指摘しています。その富で99パーセントの国民を救うには、いまこそ大々的な転換を遂げなければならない、と政府の力の重要性を説くスティグリッツ氏の主張には説得力があります。
『国家はなぜ衰退するのか』とセットで読むと、現代の資本主義社会が抱える問題の本質がよく見えてくるので、今の国際情勢の理解にも役立つ本だと思います。


4冊目はバンス副大統領の自伝『ヒルビリー・エレジー』です。アメリカのテック企業や金融関係の一部のエリートたちが富を蓄えていく一方で、アメリカの「ラストベルト(さびついた工業地帯)」で働く白人労働者たちが苦しい生活を送っている様子が克明に描かれています。こういう本を読むと、なぜトランプが支持を集めているのかもよくわかります。現在アメリカでは、南北戦争のような内戦が再び起きるのではないかと本気で心配している政治学者もいるほどです。『ヒルビリー・エレジー』を読むと、そんな可能性があるかもしれないと思うところがありますね。
ここまで紹介した本はどれも、アメリカの情勢を知る上でとても参考になります。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、読み進めると理解が深まる本ばかりです。社員のみなさんにもぜひ挑戦してほしいと思いますね。


歴史の大きな流れを掴んでいると、これまで紹介した本の理解がいっそう深まります。ですので、最初に世界史の教科書を読むのが一番いいのですが、少しとっつきにくいかもしれません。そのため社内では『漫画の世界史』を以前紹介したのですが、全部読もうとすると値もはります。何か良い本はないかと思っていて出合ったのが、立命館アジア太平洋大学(APU)学長を務めた出口治明さんの『一気読み世界史』です。人類の誕生から現代までの5000年にわたる壮大な歴史を一気通貫で書き上げた本で、歴史の大きなうねりを体感できる、ダイナミックな読書体験を味わえます。


取材時には、藤原社長のストーリーテリングに引き込まれ、5冊の本を熟読したいという気持ちが強まる一方でした。何より、藤原社長が本当に読書家で、本を読むことの面白さを社員に伝えたいと考えていることがひしひしと伝わってきました。ぜひ要約を入り口に、実際に、上記の本を手に取っていただきたいという気持ちでいっぱいです。今後もflier businessでは、社員の自律的な学びや学び合いを促す要約を提供していきます。
藤原弘之社長
1983年 川﨑製鉄(株)へ入社。人事・労務、総務、調達、経営企画などの部門を歩む。2016年以降JFEスチール㈱及びJFEホールディングス(株)での執行役員を務め、2021年3月に同社専務執行役員を退任。同年6月より品川リフラクトリーズ代表取締役社長を務める。
品川リフラクトリーズ株式会社
耐火物の製造、工業窯炉の設計、耐火物の製造販売、工業窯炉の設計施工、ファインセラミックスの製造販売を行っている世界5位の耐火物メーカー。国内8社、海外30社の関係会社を擁し*、1875年の創業から今年150年を迎える東証プライム上場企業。
*2025年3月31日現在