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マネジメントを学ぶ喜びを、すべての管理職へ

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学び続けるマネジャーが、会社の未来をつくる

インタビュービジネス書グランプリ2025 総合グランプリ&マネジメント部門賞受賞

今年で10年目を迎える「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」で、マネジメント部門賞と総合グランプリのダブル受賞を果たしたのは、『部下をもったらいちばん最初に読む本』(アチーブメント出版)でした。本書は、著者・橋本拓也さんが「自分がマネジメントを始める前に欲しかった本そのもの」として執筆した一冊です。部下を管理・監督するのではなく、メンバーが本来持っている力を引き出す「リードマネジメント」の考え方を解説し、多くのビジネスパーソンから支持を集めました。

受賞を記念した本インタビューでは、橋本さんに本書に込めた想い、リードマネジメントを実践する際のポイント、さらには部下としてできるアプローチについても語っていただきました。管理職の仕事は、ときに「つらいもの」と思われがちですが、橋本さんは「管理職でしか味わえない喜びをもっと多くの人に感じてほしい」「マネジメントを学ぶことは人生のウェルビーイングにつながる」と語ります。その希望に満ちたメッセージは、マネジメントに悩む方や、管理職を目指す方にとって、大きな励みとなるはずです。

ライター・池田友美

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上司が関わりを変えたら、部下が変わった

── 読者が選ぶビジネス書グランプリ2025総合グランプリ&マネジメント部門のご受賞おめでとうございます! まずはご感想をお聞かせください。

驚きと感謝でいっぱいです。人生で初めて出版した本で、こんな光栄な賞をいただけるということ自体が、もう嬉しいと感動と驚きとで。妻と子どもたちに伝えたんですが、まだ信じていないですね。実家の両親にも報告したんですけど、やっぱり信じていないです(笑)。

読んでくださった方からの感想で、「周りの経営者やマネジャーに広めています」という声や「社内で管理職の勉強会のテキストに使っています」という声をいただきました。そうして広めてくださっている方のおかげではないかと感じています。

部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也
アチーブメント出版
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部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
著者
橋本拓也
出版社
アチーブメント出版
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── この本を書かれたきっかけを改めて教えていただけますか。

私は今41歳なんですが、初めて部下を持ったのは28歳のときでした。それから4年ほどのことを私は「マネジメントの暗黒時代」と呼んでいるんですが、メンバーが体調不良になったり、離職したり、異動したりと、必ず半年も経たないうちにいなくなってしまっていたんです。当時はマネジメントは自分には向いていないし苦しいものだと思っていました。

本にも書いたように、そのときはマネジメントの「無免許運転」をしている状態でした。もし、マネジメントの原理原則や、押さえるべきポイント、落とし穴などがまとまっている教本があって、あらかじめ「免許」がもらえたら、あんなに苦労しなかったし、メンバーに迷惑もかけずにすんだんじゃないかと思ったんです。きっと同じように思っている方がたくさんいらっしゃるのではないかと感じ、理論と実践のどちらにも偏らずに、実体験を交えながら理論を解説する、そんな教材として役に立てていただける本をつくれたらという思いで、この本を書きました。

── まさにそのような本に仕上がっていますね。実際に出版されて、何か印象的な反響はありましたか。

ありがたいことにたくさん取材をしていただいて記事が出たり、講演の依頼をいただくようになったのがわかりやすい反響です。

それから、本を読んだ方から研修の相談に乗ってほしいという声もいただきました。私が開催しているマネジメント講座にも、本を読んだことをきっかけに来てくださる方も多くいらして、うれしく思っています。

研修を受けた方へのアンケートでは、一番変化したこととして、部下と信頼関係を築けるようになったということが挙げられています。行動を改善するためのフィードバックをうまくできるようになった、仕事の意味づけを行うことができて部下が主体的に仕事に取り組んでくれるようになった、という声が多いです。

── それはうれしい変化ですね。管理職の方が変化すると、その先にいる部下の方たちにも良い影響がありそうです。

そうなんですよね。 実際の読者の方からのコメントでは、上司自身が変わったという感想よりも、部下が変わったという感想のほうが多いかもしれません。この本の内容をもとに上司が関わりを変えた結果、部下の方から「会社のことが大好きになりました」「仕事をもっと前向きにやろうと思いました」というコメントをいただくことがありました。上司の方からも、自分の変化というより、部下の反応が変わったことがうれしかったという感想が多いです。

── それはまさにこの本が目指すところなのではないかと感じました。この本をきっかけにとても良い変化が生まれているんですね。

学び続ける管理職が、会社の未来をつくる

── 部下への関わり方を変えたいと思ったときに、どんなことから始めると良いでしょうか。

まずおすすめなのは、部下と話すときに、すぐにアドバイスをするのではなく、先に部下の考えを聞くようにすることです。経験豊富な上司は、部下の質問に対する答えを持っていることが多く、すぐにアドバイスをしたくなりがちです。でも、すぐ答えを言ってしまうと、部下の内発的な行動にはつながりません。マネジメントの役割はメンバーを介して仕事をするということですから、答えを示すことよりも、部下が自分で気づいて成長していけるよう促すことのほうが優先されます。だから、すぐにアドバイスをするのではなく、まずは話を聞く。それから、質問や相談されたことに対してアドバイスをする、というように順番を変えるということが最初の取り組みとしてはおすすめです。

── 橋本さんご自身もそれを実践されてから、相手からの反応は変わりましたか?

とても変わりました。まず、メンバーが下を向かなくなりました。それまでは面談中に私が話していたらずっと下を向いていたのですが、まず顔が上がり、部下が話す量も笑顔も増えていきました。

アドバイスをする際にも、深くうなずいてくれるようになったり、自らメモを取ったり、「それやってみます」と、行動を起こすことへの意欲や決意を部下の側から言ってくれるようにもなりました。

── 「やれ」と言われてやるのと、「やってみます」と言ってやるのでは、まったく効果が違いそうですね。

そうですね。それまでは私が言ったことに「わかりました」と言ってくれても、実際は納得していないし行動にも移っていかないことが多かったんです。

面談を繰り返しても全然実行に移らないとなると、管理職の側はイライラしたり不満を持ったりということになりやすいです。でも、1回のコミュニケーションで部下が自ら行動を起こしてくれるということになれば、面談の質や効果性が大きく高まったということになります。短時間でいかに高い生産性を上げるかが重視される今の時代に、このマネジメントは効果的に働くと思います。

── そうやって信頼関係ができていったら、上司も部下も働くのが楽しくなっていきそうですね。

上司が部下を「才能の塊だ」と見て、部下の中にある有能な力を自分が引き出していこうっていう気持ちになって接していくことが、仕事が楽しい、出社するのが楽しいということにつながり、最終的にはパフォーマンスの向上にもつながっていくのだと思います。

研修で「どうしたら部下を好きになれるんですか?」と聞かれることがあるのですが、「働いてくれていることや出社してくれているだけで感謝だという気持ちを持つことがスタートだ」とお伝えすると、はっとしていただけることが多いです。管理職の方が今の自分の基準で評価してしまうと、部下に対する不平や不満につながりやすいんです。

野球教室でたとえると、プロ野球選手が小学1年生に対して、プロとして当たり前の基準を持ち出したら、お互い不満が募るばかりですよね。まず指導側が、自分が小学1年生だったときのことを思い出して、今日は来てくれてありがとう、まずは野球を楽しもう、というところから始めなければならないはずです。同じように、今の自分の基準で部下を評価するのではなく、働いてくれてありがとう、出社してくれるだけでありがとうと、まず感謝する捉え方から始めることをおすすめしています。

── 感謝の基準を下げることが重要なんですね。本書のマネジメントを実践したいと思ったときに、周りの目や反応が気になって、それまでの自分の態度を変える勇気が出ないという方もいるのではないかと思います。最初の一歩を踏み出すためのポイントがありましたら、教えていただけますか。

私自身も、リードマネジメントを学んで実践しはじめたときに、部下から怪しがられてしまった人の一人でした。それまでは、30分面談があったら25分は自分が話しているような状態だったのですが、リードマネジメントを学んでから、質問をしはじめるようになったんです。そうすると、メンバーから怪しがられて、変ですとも言われたことがあります。

ただ、そのとき部下に「上司である橋本さんが変化しよう、成長しようと思って努力したり勉強したりしていることがわかって、うれしいです」と言われて、なるほどと思いました。「変わろうとしている上司がいるから、私も変わろうと思える」とも言ってもらえて。今までと違う関わりをしはじめるときは、自分にも相手にも違和感が生じるのは当然です。でも、それを恐れずに、一歩一歩行動を起こしていくマインドセットが大切なのかなと思います。

── 変化自体を、相手にポジティブに受け止めてもらえるんですね。

私はそう思いました。どんなことでも1回目から上手にできる人はいません。失敗は当然するものなんだと思って、それでも取り組んでいくのが大切なのだと思います。

私の人生のモットーは「見事にやらない、全力でやる」なんです。メンバーと関わるときに、見事に質問して見事に引き出そうとすると、肩に力が入ってしまう。だから、見事にやるのではなく、全力でこのメンバーのことを思って取り組んでみようという気持ちでやるんですね。今も完璧にできているわけではなくて、毎日壁にぶつかりながら、マネジメントについて勉強して、トライアンドエラーを繰り返しています。

── 「見事に」と自分に視点を置くのではなく、相手に対して「全力で」向き合うという視点に変えるんですね。

私もそうでしたが、多くの管理職の方は部下のことを大切に思っていて、育てたいという気持ちでいるんです。でも、効果的なやり方を学んで、1回目から見事に関わろうとすると、「失敗したらどうしよう」と、自分のほうに気持ちが向いて行動にブレーキがかかってしまいます。まずはうまくいかなくてもいいから全力でやってみようと決めたら、相手に気持ちを向ける。部下に貢献したい、育ってもらいたいという気持ちはもう確かにあるのですから、全力でやってみましょうとお伝えしたいです。これが実践のポイントになるのではないかと思います。

── 試行錯誤や失敗の過程自体を部下に見せてもいいということですね。それは最初の一歩を踏み出す勇気になりそうです。

ちょっと話が逸れるんですが、私は小さい頃、学習塾に行ったことがないんですね。だけど、勉強はしていたんです。それは、自宅で食事を終えた後、両親がずっと読書をしていた影響がある気がします。そうして黙々と勉強している両親を見て育って、大人ってこういうものなんだと思っていました。だから自分も本を読んだり勉強するようになったんじゃないかと思います。同じように、上司が勉強して成長し続けていることは大事なことなのかもしれません。

── 上司が学んでいるのを見ているから、部下もそれが当然だと思って学ぶようになると、組織全体の雰囲気が変わりそうです。

部下は上司をけっこう見ていますからね。ああいうふうにはなりたくないなと、管理職を目指さない若い方も増えています。だからこそ、楽しそうに働いている上司は会社の未来に重要であると思っています。

上司が成長を止めないことで、結果的にマネジメントは楽しくて喜びのある仕事になると信じています。成長し続ける上司が増えれば、マネジメントに対するイメージも変わっていくのではないかと思います。それが世の中の管理職の方たちに届けば良いなという思いです。

マネジメントを学ぶ喜びを、すべての管理職へ

── ここまで管理職側から起こせる変化についてお伺いしてきましたが、部下の視点からもアプローチできることはありますか。

じつは読者の方のメッセージの中に、部下側として読んで参考になりましたというコメントもけっこうあるんです。まず、上司がどういうことを考えたり悩んだりしているのか、上司の気持ちがちょっとわかりました、と。上司の気持ちを想像してみることは、最初に大切になることだと思います。

マネジメントの世界では、上司には育てる責任を果たす必要があり、部下には自ら育つ責任を果たす必要があるとよく言われます。部下ができることとしては、自ら育っていこうとする主体的なスタンスに立つことだと思います。そうすれば、自分が育つためにこの上司の力をどう借りられるだろうかという発想になり、自ら上司に質問しにいったり、アドバイスを求めにいったりもできるはずです。結果的にちょっと気に食わないと思っている上司の方からも、意外に良い情報がもらえることがあります。

実際に、パフォーマンスが高いメンバーほど、会社から指示された業務をやるということ以上に、主体的に勉強していますね。愚痴を言ったり、不満を言ったりしても、自分にとっても会社にとっても良いことは起きません。「どの上司の下でも成長できる」としたら、それこそ部下側にとっては大きな付加価値となります。部下として成長し続けるという姿勢は、いずれ上司になったときにも生きてくるはずです。

── 「育つ責任を果たす」という捉え方が重要なのですね。将来管理職を目指す方には、どんなスキルを身につけていくとよいでしょうか。

まさにこの本の中に書いてある5つの技術を身につけていくことがおすすめです。特にこれからの時代のマネジメントに必要なのは、フィードバックするというスキルです。最近は、ハラスメントを恐れたり、部下のメンタルヘルスの悪化や離職を気にして、厳しいことを言えなくなっている上司が増えています。でも、部下が求めている成長実感を与えるには、ときには多少耳の痛いことを伝えながらも、内発的に自ら行動を変えてもらうように促さなければなりません。これを実現できるフィードバックスキルを身につければ、管理職としての付加価値は高まっていくと考えています。

── メンバーとしてフィードバックスキルを磨くには、どのようなことができるでしょうか。

コーチングの領域ではコーチアビリティという言葉があるのですが、フィードバックをもらう経験は多ければ多いほど、上手なフィードバックをできるようになると言われています。ですから、フィードバックを磨きたかったら、自分の今の仕事ぶりや取り組みに対して、助言やフィードバックを自ら求めにいくことがおすすめです。

すると、こういうフィードバックは嫌だなとか、こういうフィードバックはすごく気づきがあるとか、参考にできる点が見つかりますし、表現のレパートリーも増えていくので、いずれ自分が部下にフィードバックを提供するときにも役に立っていきます。

── まずはフィードバックを受ける経験が大切なのですね。最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。

じつは、先日実家の近くの喫茶店に立ち寄ったときに、この本を広げて読んでいる方がいらっしゃったんです。その方は線を引いたり、付箋を貼ったりしてくださっていて、身の引き締まる思いでした。こんなに真剣に読んでくださる方がいるのであれば、この内容を書いた著者として恥じないチャレンジを、もっともっと現場でしていきたいと思いました。

私自身、マネジメントは大変だ、つらい、と思っていた時期がありました。でも、マネジメントについて学ぶようになり、部下が成長して目標を達成した姿を社内で見たとき、じつは不覚にも、感動して涙が出たんですよ。自分が仕事をして達成したときには、やったと思う気持ちはあっても、涙を流すということはありませんでした。自分が関わった部下が成長して達成したときの感動は、自分の達成とは比べものにならないほどの喜びと充実感に溢れていました。

今はウェルビーイングが求められる時代ですが、マネジメントを学び身につけることは、その人の人生のウェルビーイングを高めることになっていくのではないかと思います。一人では生み出せないような大きな価値を世の中に生み出す達成感や、部下の達成を喜べる充実感を、多くの管理職の方に得ていただきたいです。

── 管理職になることに希望の持てるメッセージですね。本日はありがとうございました。

部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也
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著者
橋本拓也
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橋本拓也(はしもと たくや)

アチーブメント株式会社 取締役営業本部長。トレーナー。

千葉大学卒業後、2006年アチーブメント株式会社に入社。入社1年目で新規事業の責任者に抜擢され家庭教師派遣事業を立ち上げるも、5年で事業閉鎖。2008年よりメンバーマネジメントに携わるが、異動・退職などが多く、7年間マネジメントの無免許運転期間を過ごす。

その後、世界60か国以上で学ばれる「選択理論心理学」を土台にしたマネジメントに取り組み、マネジメントが激変。メンバーおよび組織の飛躍的な成長を創り出し、2021年に新卒初の執行役員、2022年に取締役に就任。

現在は130人以上のメンバーマネジメントに携わる。2023年に開講したマネジメント講座は1年でシリーズ累計1000人以上が受講。また、企業経営者や管理職、ビジネスパーソンらが年間1.8万人以上受講するセミナー『頂点への道』講座シリーズのメイン講師を務める。これまでに研修を担当した受講生は2万人に上る。

文責:池田友美(2025/03/06)