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なぜ、「言語化」ブームがこんなに広がったのか?
電通コピーライターが考察するブームの背景

なぜ、「言語化」ブームがこんなに広がったのか?

2024年12月、「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2024』」の大賞に選ばれたワードは「言語化」でした。

言語化の力は、プレゼン、提案書作成、テキストコミュニケーションなど、幅広いビジネスシーンで求められます。自分や他者の考えを言語化する力を身につけたい方に最適な一冊が『こうやって頭のなかを言語化する。』(PHP研究所)です。

電通のコピーライターである著者の荒木俊哉さんは、実は言語化力の一歩は「聞く力」にあるといいます。その心は? 言語化力の高いチームづくりの秘訣もお聞きします。

1000人以上の声をもとに結晶化された「言語化ノート術」

── 荒木さんが本書を執筆されたきっかけは何でしたか。

きっかけは、前著『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』を出版した際に取材をしてくださった編集者から、2冊目を書かないかとお声がけいただいたことです。

前著を出した頃から、企業の社員教育として「言語化」をテーマに講演やセミナーをする機会が増えていて、受講者は1000人を超えました。その中で、前著でとりあげた「言語化の実践トレーニング」が難しかったという感想を聞きました。思いついたことをA4一枚のメモに書いていくトレーニングですが、最初になかなか問いを立てられないというのです。

そこで、新著ではとにかく問いが立てやすくなるように、「のはなぜか?」を足して問いをつくる、という方法を盛り込みました。例を挙げると、「プレゼン終了。テンション上がった」などと頭に思い浮かんだ「できごと」と「感じたこと」を書き出します。次に、「(テンションが上がった)のはなぜか?」と、できごとの後ろに6文字を足せば、その理由や背景を掘り下げる問いができます。

これは新著の「言語化ノート術」の一部ですが、時間をかけずにできるシンプルさや、習慣化しやすさを意識しました。

こうやって頭のなかを言語化する。
こうやって頭のなかを言語化する。
荒木俊哉
PHP研究所
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こうやって頭のなかを言語化する。
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著者
荒木俊哉
出版社
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「言語化ブーム」がなぜ、急速に広まったのか?

── 読者やセミナー受講者の声の集大成といった面もあるのですね。ちょうど2024年12月、「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2024』」の大賞に「言語化」が選ばれました。「言語化ブーム」に対する荒木さんのお考えをお聞かせいただけますか。

まず、「言語化」が辞書に載ってない言葉だったことに驚きました。たしかに、この1、2年で言語化という言葉がクライアントとの打合せでも飛び交うようになりましたね。

このワードが広まったのは、昔から多くの人が悩んでいたことを端的に表してくれるワードだからではないでしょうか。

私の仮説ですが、SNSの影響も相まって、社内外問わず自己アピールを迫られる風潮が強まっています。発信ツールはビジュアルや映像など様々ですが、言葉は誰でも使えるもの。しかも、若手社会人は小学校からキャリア教育が行われていて、キャリアシートに目標を書くことが日常の世代です。

そんな中で、自分の考えの発信を促す空気と、「言語化」のワードがバチっとハマったんじゃないかと思います。

いま会社員の「キャリア自律」が求められていますが、個々人がどんなキャリアを歩みたいかを考えて、切り拓かないといけない。そこで、自分の強みや考えを的確に言葉にすることに対して、悩みが生まれているように思います。

また、リモートワークの浸透で、チャットツールでのテキストコミュニケーションが一般的になり、文字ベースで質問したり考えを伝えたりする機会が増えたことも影響しているでしょうね。

聞くことは、「相手の辞書をつくる」こと

── 新著では、言語化力のベースは「聞く力」にあると書かれていました。クライアントや生活者など他者の声を聞くときに意識している点を教えてください。

コピーライターの仕事には広告や販促物、社内のインナーツールをつくるといった目的があり、コピーはそれを達成するための一手段です。だからインタビューでは、クライアントの話をしっかりと聞いて、言葉に落とし込んでいく必要があります。実際、コピーをつくる時間の9割が「聞く」工程です。

2023年にキャリアコンサルタントの資格を取得しましたが、キャリアカウンセリングとコピーライティングは似ています。いずれも対話によって相手の本当の思いや意見を言語化し、思考を整理していく作業だからです。また、相手の言葉の中にすでに答えがある、という発想も共通していると思いました。

相手の言葉には、その人の経験からにじみ出た「いい言葉」が必ずある。コピーを書くためのインタビューでは、それを探しながら聞いていきます。ある自動車メーカーのコピーを書く仕事で、技術責任者の方に開発への想いを尋ねたときのことです。なかなか言葉が出てこなかったので、同席していたその責任者の部下の方に、「上長からよくいわれる言葉」を尋ねてみました。すると、口ぐせが「かっこ悪くなったらもうこのプロジェクトやめるぞ」だというのです。

これぞまさに、車の機能や性能ではない、この人ならではの思い入れある言葉。それがベースになって、「かっこ悪くなったら、やめるからね」というコピーが生まれました。

何気なく使っている言葉の中に、価値ある考えがある。コピーライターの仕事はいかにそれを掬い取るか。その人が何度も使う言葉をもとに、対話によって、その人ならではの意味は何かと深掘りしていく。このプロセスを「相手の辞書をつくる」と呼んでいます。

── 言語化に慣れていない方の言葉を掘り下げるために、荒木さんが実践していることはありますか。

恥ずかしがらずに、自分が納得するまで聞くことでしょうか。たとえば、上司との打合せで「〇〇な感じでやっておいて」といわれたとする。ここで、ふわっとした理解のままで具体的な中身を聞かずにいると、後で仲間に伝える際にうまく伝えられないんです。私の場合だと、クライアントの要望を制作プロダクションの方々にきちんと説明できないといけない。自分のその先にいる誰かに伝えるためにも、腑に落ちるまで聞くことが大事だと思います。

特に注意が必要なのは、カタカナのビジネス用語。たとえばクライアントが「当社はサステナブルなビジネスをめざしている」といったとします。「持続可能な」という意味だけれど、この会社にとっての「サステナブル」とは何かと問いかける必要があります。

翻訳の世界では、「トランスクリエーション」という言葉があります。「翻訳(translation)」と「創造(creation)」を組み合わせた造語。相手の話を意図通りに正しく翻訳するだけでなく、異なる文化背景を持つ人に対して、より魅力的に、わかりやすく伝えることだそうです。

「言語化」はこのトランスクリエーションに近いプロセスです。ある人の言葉の意図を正しく汲み取って翻訳し、柔らかく伝えていく。すると、伝えた人も受けとった人もみんな幸せになるのかなと思います。

どの人の考えも大切だという前提に立つと、相手のことを肯定的に聞けると思うんですよね。自分と異なる意見の人との対話でも、学ぶ機会をいただけたことに感謝する気持ちでいると、必ず発見があります。

コピーライティングでも、対象が大好きな商品とは限りません。だからこそ、「その商品や企業には絶対いいところがある」という前提で、よいところを探します。

言語化力の高いチームをつくる秘訣とは?

── 言語化力は組織やチームの共通言語をつくり、組織力やチーム力を高めていくうえでも重要なスキルだと捉えています。言語化力を高め合えるようなチームをつくりたいリーダーにはどんなアドバイスをされますか。

大事にしてほしいのは、相手を尊重して、「あなたの意見は大事だよ」という空気をつくること。意見を否定されてばかりだと難しいので、リーダーがどんな意見でもいいと宣言したり、普段から率先して意見を聞いたりする。「否定せずにまずは率直に伝え合う」という、心理的安全性のある場づくりが大事だなと思いますね。

そのうえで、私がチームでやっているのは、紙の資料などを一切持ち寄らずに話す機会を設けることです。プロジェクトの最初のほうで、「今回のお題、どう思う?」と一人ひとりに意見を聞いていく。談話のような感じですね。

いきなりプレゼンテーション資料を持ち寄ると、「うまく答えなきゃ」と肩に力が入ってしまう。また、どうしても伝え方が上手い人の影響力が大きくなりがち。なので、準備なしで、本心をフラットに話してもらう。そのほうが大人数の場では遠慮しがちだった人や、若手の人からも、率直な意見が聞けて、よいアイデアにつながることもあります。

谷川俊太郎さんの詩集が「言語化の師匠」だった

── 荒木さんの人生観やキャリアに影響を与えた本は何でしたか。そこからの気づきや、現在に与えている影響について、差し支えない範囲でお聞かせください。

小さい頃から影響を受けてきたのは、谷川俊太郎さんの詩集です。谷川さんは2024年11月にお亡くなりになりましたが、「生きる」「二十億光年の孤独」など、幅広い世代に愛されてきました。

私の「俊哉」という名前の「俊」の漢字は、母が谷川俊太郎さんの名前にちなんでつけたそうです。そんな縁もあって、谷川俊太郎さんの詩が載っている絵本を読むようになり、コピーライターをはじめてからも好きで読んでいて。詩集は全部持っているんです。

詩を読むたびに思うのは、谷川さんはコピーライターのような詩人だということ。言葉の自由さがあって、柔らかい文章の中にきちんと気づきがある。

広告の世界では、「いいコピーとは、発見のあるコピー」とよくいわれます。谷川さんの詩はまさに常に発見や気づきをくれるなと。実際、「朝のリレー」という詩がネスカフェのCMに使われたほど、広告とも相性がよいようです。そんな谷川さんのあり方から多くのことを学びましたね。

── 最後に、荒木さんがこれから挑戦してみたいことを教えてください。

今後は、ビジネスパーソンだけでなく子どもたちの教育にも関われたらと考えています。つい最近、著書を読んだ方から「子どもの作文教育にも使えそうですね」という感想をいただきました。

私の両親が小学校の教師だったこともあり、もともと教育には非常に関心がありました。自分の考えや想いをきちんと言葉にすることの大切さやその方法を、子どもたちにも伝えられたらいいですね。言葉を使って、人の学びや成長の支援に少しでもお役に立てたらと思っています。

こうやって頭のなかを言語化する。
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荒木俊哉
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著者
荒木俊哉
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瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。
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荒木俊哉
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荒木俊哉(あらき しゅんや)

株式会社電通 コピーライター

1980年、宮崎県生まれ。一橋大学卒業後、2005年に電通に入社。営業局を経てクリエイティブ局へ。コピーライターとして、さまざまな商品・企業・団体のブランディングにたずさわり、これまでに手がけたプロジェクト数は100以上、活動は5大陸20カ国以上にのぼる。世界三大広告賞のCannes LionsとThe One Showのダブル入賞をはじめ、ACC賞、TCC新人賞、NIKKEI ADVERTISING アワード、YOMIURIADVERTISING アワード、MAINICHI ADVERTISEMENT DESIGNアワードなど、国内外で20以上のアワードを獲得。広告以外にも、国際的ビッグイベントのコンセプトプランニングや、企業のミッション・ビジョン・バリュー策定のサポートなども行う。一橋大学で広告のゼミ講師を務める。また、国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ。著書にベストセラー『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)がある。

文責:松尾美里(2024/12/26)