
マインドフルネスの秘訣は「いかにネガティブな思考を手放せるか」
2018年発刊後も版を重ね続けている『1日10秒マインドフルネス』(大和書房)が、2024年7月、文庫化のはこびとなりました。「一番わかりやすいマインドフルネス本」として、読者の支持を得ています。 著者は、45年の瞑想歴、30年以上のマインドフルネス瞑想の実践を積まれてきた、精神科医の藤井英雄先生です。マインドフルネスによって、心身がスッキリし、効率も上がり、前向きになれる。その効果はビジネスパーソンの間にも広まっているものの、「習慣を継続できない」という悩みを抱えている方も。マインドフルネスを習慣化し、自己肯定感を高めるにはどうすればよいのでしょうか? ※本記事はPR記事です。
ライター・松尾美里
── ご著書では、「今・ここ」に集中するための、エクササイズとそのコツがわかりやすく解説されていました。改めて、執筆の背景をお聞かせいただけますか。
本書を書いた当時は、マインドフルネスの連続セミナーをよく開催していました。セミナーの2回目に、受講生の方に瞑想を継続できているか尋ねるものの、できている方は4~5分の1くらい。「せめて15分はやらないと」と気負ってしまい長続きしないケースが多かったのです。
どうしたらマインドフルネスを習慣化して身につけてもらえるのか。考えた結果、まずは「10秒でもいい」とハードルを下げること、そしてカレンダーなどに記録することを提案しました。するとマインドフルネス瞑想の継続率が上がったのです。本書では、「10秒マインドフルネス3つの手順」として、「はじめの宣言(スタート)」⇒「今、ここの現実を10秒間感じる」⇒「おわりの宣言(よし)」という流れを紹介しています。
── 私も「これなら続けられるかも!」と思えました。
継続するポイントは、たとえ寝不足でも不測の事態が起きても、「これならやれる!」という最低限の目標にしておくこと。10秒なら、寝る前に「今日は瞑想をやれてなかった」と気づいてもすぐにクリアできますよね。調子がよければもっと長く取り組めばいい。
実は、Googleでマインドフルネス実践プログラム「SIY」を開発したチャディー・メン・タン氏は『サーチ・インサイド・ユアセルフ』で「最低限、一呼吸の瞑想でいい」と書いていて、私と同じ方法をとっていると嬉しく思いました。
マインドフルネスは、メンタルを整えるうえでの土台、つまりパソコンでいうとOS(オペレーティングシステム)として存在するもの。認知行動療法やアンガーマネジメント、ポジティブ思考といったメンタルを整えるスキルは、個々のアプリケーションとしてマインドフルネスに下支えされているのです。
たとえば、アンガーマネジメントでは、怒りの感情のピークとなる6秒間を我慢しようという「6秒ルール」があります。ただ、マインド“レス”ネスな状態(マインドフルネスではない状態)で6秒を数えてもうまくいきません。
ポジティブ思考も同様です。心底イライラしているのに「このつらい経験がいつか役立つかもしれないよ」と言われても、余計に腹が立つでしょう? 「この経験が役立つかもしれない」という考えが、他者の言葉によってではなく、心の中から湧き上がってはじめて、ポジティブになれます。そのためには、マインドフルネスな状態で、自分を客観視する必要があるのです。

── マインドフルネス瞑想は「10秒でも効果がある」と聞いて驚きましたが、10秒でも効果を感じられる背景は何ですか。
私は、メンタルダメージとは、その悩みの「深さ」×「大きさ」×「持続時間」だと捉えています。たとえ些細な悩みであっても、長い間そのことにとらわれてマインド“レス”ネス(自動操縦モード)になっていると、そのメンタルダメージはとてつもなく大きくなってしまう。だから、「10秒マインドフルネス」で、いったん悩む時間を途切れさせて、リセットすることが大事です。
マインドフルネスは本来、「今・ここ」の瞬間の気づきと客観視です。実は誰にでも「ハッとする瞬間」のように、マインドフルネスの瞬間が訪れているのですが、長くても2、3秒しか続かず、もとのネガティブな思考に戻ってしまうことが多いのです。
10秒マインドフルネスは、少なくとも10秒間マインドフルネスを継続する力を養います。このトレーニングをしておくと、ネガティブ思考にとらわれてしまった際にマインドフルネスを取り戻し、ネガティブ思考を手放すことができます。
効果を高めるコツは、日常生活で偶然訪れるマインドフルネスの瞬間を逃さないことです。たとえば、待ち時間が長くてイライラしていると、ハッと我に返る瞬間がありますよね。その際に、「10秒マインドフルネス」のエクササイズで、いったんイライラの感情を手放してみるのです。
── ネガティブ思考をリセットしやすくするための秘訣はありますか。
2つの法則を紹介します。
1つは「忙しいと平気の法則」。仕事や家庭で忙しすぎると同じ悩みを抱え続けるような暇がありませんよね。忙しいと、ネガティブ思考もおのずと途切れ、メンタルダメージは大きくなりません。ただし、一息ついたときにどっとネガティブ思考が押し寄せないようにすること。そこで、必要なのがマインドフルネス瞑想です。忙しくても忙しくなくても、意図的にネガティブ思考を「棚上げする」ことで、リセットするのです。
もう1つは「他人事なら割と冷静になれる法則」です。親しい友人が悩みを持っていても、他人事なら割と冷静に、建設的なアドバイスができるでしょう? それは客観視ができるから。マインドフルネスは自分のモヤモヤや不安を、強制的に他人事にする技術なんです。

── 自分を客観視できないくらい落ち込んでいるときに、そこから脱するにはどうしたらよいでしょうか。
「あぁ、今落ち込んでいるな」と気づいたら、3秒以内にその感情を実況中継することです。これは3つのパターンがあります。1つめは、アナウンサーのように「おっと、ここで藤井はくよくよしているようです!」などと実況する方法。2つめは、カウンセラーが相談者に「くよくよしているのですね」と問いかけるような方法。そして3つめは、小説家がト書きを書くように「藤井はくよくよしているのだった」と冷静に実況する方法です。3つのうち、自分にしっくりくる方法を使ってみてください。
どんな人でも、24時間365日マインドフルネスでいることはできません。必ずマインド“レス”な状態に陥ってしまう。その際に、悩み続けるのか、「あ、悩んでいるな」とリアルな悩みを断ち切り、マインドフルネスな時間を持つか。いかに後者の時間を長く持てるかで、マインドフルネスの上達度合いを測れるといってもいいでしょう。
日頃マインドフルネスのエクササイズをしているのは、こうした、「いざというとき」に対処するためなんですね。悟りを開いたお釈迦様も、おそらく四六時中マインドフルネスだったというわけではなく、マインドフルネスへの切り替えが速かった、ということなのではないか、と推測します。

── 私は未来のことに不安を感じやすく、自分の行動に対して「それで大丈夫なの?」と価値判断の内なる声に縛られがちです。この価値判断の声とうまく共存するためのアドバイスをいただけますか。
私たちの潜在意識は、外界をありのままに受け入れることができません。それは、過去に失敗したり批判されたりしてできた傷が潜在意識に蓄積しているから。これが自己肯定感を損なう原因です。
たとえば幼い頃に犬にかまれて恐怖を感じた人は、犬を見ると「またかまれそう」と思ってしまう。価値判断の声が大きくなるときは、自分に色濃く刻まれた弱点が刺激されているのです。
マインド“レス”ネスだと、ネガティブな体験を反芻して、自ら自己肯定感を弱めてしまう。そんなときこそ、1秒でも早くマインドフルネス瞑想でネガティブな思考を手放せるかが問われます。
── なるほど。逆にいうと、マインドフルネスな瞬間を増やすことが自己肯定感にも良い影響を与えるのですね。
そうですね。この「ネガティブ思考を棚上げすること」、つまりマインドフルネスの習慣自体が、自己肯定感を上げる最大の武器なんです。生きているとどうしても不安や怒り、モヤモヤ、諦めといった負の感情を抱くもの。これらは避けるべきものではなく、「マインドフルネスを鍛えるためのごちそう」と捉えるとよいでしょう。
たとえば「三日坊主になりがち」だと自己嫌悪しているとしたら、「今、三日坊主の自分に嫌悪感を抱いているな」と現状を実況中継します。そのうえで、「5日目に再開できればいい」と思って取り組めばいいのです。こうして自分との約束を守ることができれば、「私は自分との約束を大切にできる」と思えるので、そんな自分もまた重要な人間であることに気づきます。このようにしてマインドフルに過ごすことで、自己肯定感も高まっていくのです。
── 藤井先生は、気軽にマインドフルネスを習得できる方法を、著書・ブログで惜しみなく発信されています。マインドフルネスの普及を続けている原動力は何でしょうか。
これまでマインドフルネス瞑想の効果を実感してきて、それを子どもたちの世代に広めたいという思いがあるからです。諸外国に目を向けると、たとえばアメリカのメリーランド州の小学校では、悪い態度をとった生徒に罰を与えるかわりに、瞑想をさせているそうです。その結果、停学処分になる生徒が減り、出席率が上がったといいます。つまり、子どもにもマインドフルネスの効果が出ているのです。
マインドフルネスはメンタルを整えるOSですので、その土台づくりとして、子どもの頃から学ぶ場があるといいなと考えています。ただし、「マインドフルネスの習慣をつけなさい」と大人がいうスタイルでは効果が半減します。
大事なのは、親や先生などの大人ができるだけマインドフルネスに過ごすこと。ホッと一息ついていると、それを見た子どもも安心します。マインドフルネスは伝染するのです。「お母さん(お父さん)、最近穏やかに過ごしているよね。どうして?」と子どもが尋ねてきたときに、「実はマインドフルネスというのがあってね」とお話をしてあげる。子どもが興味を持ったときがマインドフルネスを教えるチャンスです。
人類の未来は、これからを担っていく子どもたちにかかっているので、今後もマインドフルネスを伝えていくお手伝いができたらと考えています。
藤井英雄(ふじい ひでお)
精神科医、作家
精神科医、医学博士。鹿児島大学医学部卒業、同大学院博士課程修了。2011 年、心のトリセツ研究所を設立。日本キネシオロジー学院顧問。あがり症克服協会顧問。45年の瞑想歴、30年以上のマインドフルネス瞑想の実践から、日常生活のなかで手軽にマインドフルネスを習得できる方法を提案、心理学・東洋医学・氣の知識や情報をわかりやすく発信し、多くの人のネガティブ思考による悩みを解決している。著書には『マインドフルネスの教科書』『マインドフルネス「人間関係」の教科書』(ともに Clover 出版)、『怒りにとらわれないマインドフルネス』(大和書房)などがある。
公式ブログ:心のトリセツ研究所https://ameblo.jp/cocoronotorisetsu/