
「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」で総合グランプリとビジネス実務部門賞に選ばれた『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社、以下「本書」)。
受賞を記念して、佐久間さんの「雑務をチャンスに変える」考え方や、新しい環境に飛び込むことのメリット、部下・後輩の能力を引き出す方法などについてうかがいました。
── 受賞おめでとうございます! 今回の受賞の感想をお聞かせください。
多くの方が僕の本に投票してくれたということがうれしかったですね。
まさか自分がビジネス書を出版するとは思っていませんでしたが、いろいろな方から感想が届きましたし、今回の受賞もその反響の一つだと感じています。本当にありがとうございました。


── 本書を執筆されたきっかけを教えてください。
いつからか、僕のSNSに、若いビジネスパーソンから仕事の悩み相談が多く寄せられていました。それぞれにお答えしていた時期もあったんですが、だんだん数が増えて答えきれなくなってきたんですね。
そんなときに、ダイヤモンド社さんから「本を出しませんか」とオファーをいただきました。「みなさんの相談に答えきれないから、これまでの経験を通して感じたことや、よく聞かれることを本にまとめてみよう」と考えて、出版を決めました。
── 本書の「『雑務』こそチャンスに変える」という項目が印象的でした。ある仕事をきっかけに、仕事への向き合い方が変わったと書いていらっしゃいましたね。
はい。入社1年目でドラマのAD(アシスタント・ディレクター)をしていたときのことです。僕はその仕事を「つまらないうえに激務」で、「だれにでもできる仕事」だと思いこんでいました。
そんなある日、監督から「明日の撮影で小道具として使うから、サッカー部の女子マネージャーの手づくり弁当を用意してこい」と言われまして。正直面倒だったのですが、なんとか対応するしかないですよね。学生時代にバイトをしていた居酒屋の厨房を借りて、仕事の後につくりはじめました。
とはいえ、女子高生の手づくり弁当なんて想像もつきません。頭を抱えているうちに「サッカー部のマネージャーなんだから、おにぎりをサッカーボールに見立ててはどうか」と考えついて、サッカーボール型のおにぎりをつくったんです。
夢中で弁当を用意して、ふと気づくとロケの2時間前になっていました。弁当を持って急いで現場に行くと、驚いたことに監督が「この弁当をストーリーのメインにしたい」と言ってくれたんです。
── 小道具だったはずのお弁当がストーリーのメインに! まさに雑務がチャンスに変わったんですね。
それまで、ADの仕事にモチベーションなんてありませんでした。雑務ばかりで、自分がやりたかった、クリエイティブな仕事にはつながらないと思っていましたし。
ところが、その出来事を通じて「ただの下働きなんて存在しないんだ。どんな小さな仕事も、大きな仕事につながっているんだな」と気づき、一つひとつの仕事に対する姿勢が変わっていきました。
── 本書の「組織にいるうえで、不機嫌でいるメリットなど一つもない」という言葉にも共感しました。
実は僕自身、もともとそんなに怒るほうでもないんですが……仕事しているうちに気づいたんです。「どう考えても、機嫌がいいほうがトクだな」と。
楽しそうに働く姿を見せることで、新たなチャンスがめぐってくると考えています。
── その一方で、周囲を不機嫌でコントロールしようとする人も多くいますよね。
そんな人には「感情をコントロールできないと、まわりからダサいと思われる」と認識してもらうのが効果的です。
僕がよくやるのは、先手を打って相手を封じる作戦。その人に似た人をでっちあげて「実は他のプロジェクトに不機嫌な人がいて、ほんとダサかったし困ったんですよね」、「われわれのチームにはそういう人はいないですよね」と圧をかけておきます。そうすれば、誰も周囲を不機嫌で周囲をコントロールしなくなり、雰囲気のいいチームになっていくはずです。
── マネジメントについてもう少しお聞かせください。思うように実力を発揮できていない部下・後輩に対して、佐久間さんはどんなふうに声をかけますか。
いくつかのパターンがありますが、よくあるのは「上司から試されていると思って、委縮してしまう人」ですね。
そういう人には「もう試される時期は終わってるよ。あなたのこのスキルや経験がプロジェクトに寄与できると考えてアサインしたから、まずはそのスキルを発揮することを意識しよう」と声をかけます。
── 「あなたを必要としている理由」を明確に伝えてあげるんですね。
そうですね。その人がうまくいかないのは、どの武器を評価されているのかが不明瞭だからだと思うんです。だから自信がなかったり、なんでもかんでも手を出そうとして失敗したりしてしまう。
「評価されること」に頭がいくと、人は能力を発揮しにくくなってしまいがちです。挑戦を恐れたり、嘘をついてしまったり……。そういうときは「プロジェクトの実行と評価は別だよ」「一つひとつの行動では評価しないよ」と伝えます。
── 本書では「『ちょっと無理』する」ことのメリットにも言及されていました。
今できることだけを繰り返しても、自分の意外な能力に気づくことはできません。むずかしめの仕事にチャレンジすればするほど、自分の解像度が上がっていくんです。
── 自分の解像度、ですか。
自分を常に「新しい挑戦をしている環境」に置くと、自分の得意・不得意が見えてきます。
一方、ルーチンワークばかりしていると、今の自分のスペックや、自分が相手にどう思われているのかが見えにくくなりますよね。ある程度経験を重ねて、自分の名前で仕事ができるようになるとなおさらです。
そういう意味で、ルーチンワークばかりするのではなく、意識的に新しい環境に飛び込むことが重要です。その経験を通して、自分が見えてきますし、得られるものも多いですから。
── 佐久間さんは「究極的に仕事はすべて、運で決まる」とも書いていました。
「やりたい仕事に欠員が出て、アサインされた」「ダメ元で依頼したら、色よい返事をくれた」……こうしたラッキーは、単なるラッキーではありません。
誰とも揉めることなく、それまでの仕事でいただいた「縁」を大事に育てているからこそ、運が転がりこんでくるのだと思います。
── 運はつくれるものだということですね。
仕事相手に対して常に誠実でいる。理不尽なことをしない。機嫌よくいる――。そうした振る舞いが運と成功を引き寄せるのだと信じています。
── 最後に、フライヤー読者にメッセージをいただけますか。
すばらしい賞に導いてくださり、本当にありがとうございました。
若いビジネスパーソンはもちろん、中堅やベテラン、これから社会人になる人にもぜひ本書を手に取ってほしいと思います。いろんな人の役に立てばうれしいですね。


佐久間宣行さんご出演の動画:佐久間宣行が読むディーヴァー
佐久間宣行(さくま のぶゆき)
1975年11月23日、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」「ウレロ☆シリーズ」「SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜」「キングちゃん」などを手がける。元テレビ東京社員。2019年4月からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」のパーソナリティを担当。YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」も人気。著書に『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる』(扶桑社)がある。