
総合グランプリに輝いたのは……?
2023年2月16日、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」の授賞式が開催されました。 「読者=ビジネスパーソン」が価値ある書籍を評価する本グランプリは今年8回目の開催です。
注目の結果発表、授賞式、そして受賞作品の著者、編集者、翻訳者からのメッセージ。その模様をダイジェストでお届けします!
総合グランプリ&部門賞&特別賞の結果詳細はこちらから。
ライター・庄子結

授賞式は、フライヤー執行役員で、読者が選ぶビジネス書グランプリ事務局長を務める井手琢人のスピーチでスタート。司会は、アナウンサーの竹内夕己美さんです。
井手:近年、以前から叫ばれていた「リスキリング」や「アンラーニング」の重要性がますます高まる一方です。仕事で必要な知識や技能を獲得することや将来のキャリアアップのため、ひいては生きがいや働きがいを求めて「学び直し」が再注目されています。
ビジネス書はビジネスパーソンの学びとダイレクトに繋がるもので、昨年も多くのビジネス書がコロナ禍におけるビジネスパーソンの学びを促してくれました。
読者が選ぶビジネス書グランプリの開催は8回目になります。少しずつ拡大してきまして、第3回からは多くの協力各社のお力添えにより、このグランプリの受賞作が全国の書店でフェア展開されるという形になりました。そして、メディアでも多く取り上げていただけるようになってきました。
今回も皆さまのご協力をいただきまして、書店フェアは約1,400店舗がご参加くださっております。この場をお借りしまして感謝を申し上げます。
いよいよ投票結果発表へ。
フライヤー代表取締役CEO大賀康史より、各部門賞、総合グランプリ受賞の著者や編集担当者にトロフィーの授与を行いました。
『リスキリング』(日本能率協会マネジメントセンター)

2018年頃より、リスキリングを広めるための活動を行ってきました。
リスキリングは、働く私たちにとっての“貯金”だと考えています。リスキリングに取り組めば、給料が上がり、幸せな社会人生活が送れるでしょう。私自身、これからも、リスキリングに取り組むみなさまのご支援ができれば幸いです。
『だから僕たちは、組織を変えていける』(クロスメディア・パブリッシング)

これまで、組織をテーマにした本には、経営者や人事をターゲットにしたものが多かったように思います。そんな中、現場から組織を考える本があればと考えて、本書を企画しました。
著者の斉藤徹さんは、常に完璧を目指す方。原稿が15校にのぼるほど、よりよい本を作るためにご尽力いただきました。
「新しいチームづくりの本がこんなに支持されるとは!」と、書いた本人が一番びっくりしています。それだけ多くの方々が、今の組織のあり方、数字を追う虚しさに悩んでいるのでしょう。
知識社会では「斬新なアイデア」こそが、ビジネスの成長エンジンです。しかし、多様な人たちの知恵を集約し、学び続けるチームをつくることは、統制する組織をつくるよりずっと難しい。この本では、そのためのノウハウを一冊にぎゅっと体系化してみました。あきらめムードの職場を、やる気に満ちたチームにしたい。そう願う人たちの応援団になり、つらいときにも寄り添える本をつくりたい。これが『だかぼく』執筆の思いです。この本が、あなたの希望の書になれば、これに勝る喜びはありません。
『22世紀の民主主義』(SBクリエイティブ)

成田悠輔さんの「民主主義の呪い」という論文を拝見して、出版を依頼しました。
成田先生は「世の中をよくしていこう」という強い意志のある方。「選挙や社会に興味のない方に、どうしたら読んでもらえるのだろう」と考えながら、工夫して書いてくださいました。
ビジネス書ではないのにビジネス書グランプリに選んでいただいたと聞いて動揺しています。
『言語化の魔力』(幻冬舎)

コロナ禍で、大変な思いをしている方は多いと思います。そういった人たちの癒やしや助けになるような本を出したいと考え、本書を書きました。
私が運営しているYouTubeチャンネルには、これまで10万件以上のお悩みが寄せられてきました。そうしたお悩みを分析して見えてきたことを、この一冊にまとめています。
『13歳からの地政学』(東洋経済新報社)

本書は、著者の田中孝幸さんが、ご自身のお子さんに読んでほしいという想いを込めて書いた一冊です。
実際に「子どもや孫に読ませたい」「家族で読みました」というお声を頂戴しており、本当にうれしく思います。
このたびは「読者が選ぶビジネス書グランプリ」のリベラルアーツ部門賞をいただくことになり、本当に光栄に思っております。
リベラルアーツは日本語では「教養」と訳されます。
これは私が今、海外に住んでいてなおさら強く感じることですが、教養というのは一見、実用から遠いふうに見える話ではあるものの、実は非常にビジネスパーソンにとって役に立つ知識であります。
そういう意味で、リベラルアーツとしての『13歳からの地政学』の価値を認めていただいた今回の受賞は、著者として本当に嬉しく思っております。
この本はすべての世代に「世界への興味の扉が開かれるように」という願いを込めて書きました。お手に取っていただけたら本当に嬉しいです。
『生き方』(サンマーク出版)

本書は、著者の稲盛和夫さんに「最高のものを作りたい」と申し上げて制作した本です。多くの読者から支持されたのも「最高でありながら平易であるから」ではないでしょうか。
20年近く前に刊行した本ですが、いまもまったく古びていません。中国で600万部を超えるなど、海を越えて広く読まれているのも、人間のエッセンスに即した内容だからだと考えています。
『限りある時間の使い方』(かんき出版)

海外のブックフェアに参加した際、ニューヨークのエージェントさんより本書の原書をご紹介いただき、日本語版出版のオファーを出しました。
若い方から年配の方まで、「時間に対する考え方を見つめ直すことができました」という声が多く寄せられています。
『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社)

部数を重ねたことはもちろん、こうして読者に支持された本になったこと、著者の佐久間宣行さんも私もうれしく思っています。
佐久間さんがパーソナリティを務める「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」を聞いて「佐久間さんと仕事がしたい」という想いから出版をオファーしました。
佐久間さんはいつも楽しく、クレバーな方です。非常に有意義な打ち合わせを重ねながら、本書を制作することができました。
初めて書いたビジネス書でこのような光栄な賞をいただいて、本当にうれしいです。
会社を独立したとき、僕のSNSに、若い方から中堅の方まで、仕事の悩み相談をいただくことが多くありました。最初はそれに答えていたのですが、次第に答えきれなくなり、「自分の思っていることを体系立てて書けたらお役に立てるのではないか」と考えて本書を書きました。
本書が幅広く受け入れられて、このような賞までたどり着いたのは、本当に僕一人の力ではありません。一緒に働いてきてくれたスタッフや、今回出版を担当していただいたダイヤモンド社のみなさんのおかげだと思います。ビジネス書を書くことにまったく慣れていなかった僕を導いてくださったのは、ダイヤモンド社のみなさんでした。
「佐久間の仕事が面白いから、あの本を読んでみようかな」と思ってもらえるように、今後も本業を一つひとつ頑張っていきたいと考えております。
フライヤーの大賀より、今年支持を集めたビジネス書の傾向について総括です。

「読者が選ぶビジネス書グランプリ」の各賞に輝いた作品の関係者のみなさま、本当におめでとうございます。私から簡単に、今回の受賞作について総括いたします。
2022年という1年は、「動」の側面と「静」の側面とがせめぎ合っていたように思います。
ロシアの侵攻をきっかけとするウクライナ戦争は、いまだおさまる気配はありません。治安が良いとされていた日本でも、元首相の銃殺事件が起きました。経済面では、アメリカの金利上昇によって円高が進んで、長らくデフレだった日本でもインフレの兆しがあります。
一方で、コロナ禍も3年が経過して、海外ではマスクをしなくなり、以前の日常が戻りつつあります。ビジネスシーンにおいても日々の暮らしにおいても、さまざまな出来事や変化に対して機敏に対応する人もいれば、立ちすくむ人もいるでしょう。そこに共通しているのは、「これからの未来を明るく生きたい」という思いではないでしょうか。
そのような背景と受賞作の傾向から、今回の「ビジネス書グランプリ」のキーワードは「迷いの中に差す光」としました。
社会や経済は大きく揺れ動き、これまでの仕組みや流れに対する疑問も湧き出しています。ときに立ち止まりながら、どう対応すればよいか悩み、考える。でもそれは、決して後ろ向きなものではなく、前に進むエネルギーを秘めたものです。そのような時代背景がビジネス書のトレンドにも、色濃く反映していると思います。
総合グランプリに輝いたのは、『佐久間宣行のずるい仕事術』でした。組織人として活躍した後、現在は個人としても活躍する佐久間さんは、多くの人が目指したい存在と言えるでしょう。大ヒットの背景には佐久間さんへの信頼があるように思います。昔ながらの考え方が色濃く残る組織で働く人たちに、大きな共感を与えた一冊でした。
イノベーション部門賞に選ばれた『リスキリング』、マネジメント部門賞に輝いた『だから僕たちは、組織を変えていける』、自己啓発部門賞に選ばれた『言語化の魔力』。この3冊はどれも、いまの状況を乗り越えるための視点を、自分ごととしてとらえた前向きな本であったと思います。
政治・経済部門賞の『22世紀の民主主義』は、これまでの世界を駆動させてきた資本主義と民主主義について、気鋭の経済学者である成田悠輔さんが根本から捉え直した本でした。
リベラルアーツ部門賞は、2022年を通して話題書となっている『13歳からの地政学』でした。これはいまのリアルな国際関係に関して、教科書よりも踏み込んだ内容が書かれていて、日本の今後を考える上でも、エポックメイキングな本だと言えるでしょう。
グロービス経営大学院賞を受賞した『限りある時間の使い方』は、忙しく流されがちな人生を反省し、それに抵抗する力が得られる著作でした。
2022年には、現代の経営の神様と言われた稲盛和夫さんが永眠されました。変化の激しい時代だからこそ、普遍的な、人が貫くべきものを訴えた『生き方』が、ロングセラー賞に輝いたのだと思います。長く親しまれてきた『生き方』という本は、今も多くの人の心の拠り所になっています。
個人でも組織でも、10年前の常識が通用しなくなり、方針を定める難しさを誰もが感じているのではないでしょうか。そのような時、本は私たちの地図や羅針盤になってくれます。個人と社会の要請に応えるために、いろいろな方々が日本の出版業界を支えてくださり、一人の読者として日々感謝しております。この会を主催する私たちも、そうして本と人をつなぐ輪に貢献できることを、幸せに感じております。
今年のフェアも、昨年に引き続き全国の1,400を超える書店で展開される段取りになっています。これからの展開も最大限、力を尽くしていきます。
最後になりましたが、今回の「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」にエントリーしてくださった関係者のみなさま、ならびに本賞の運営にお力添えくださったみなさまに、心よりお礼申し上げます。
毎年多くの素晴らしい本に巡り合えることに感謝と期待の気持ちを込めて、今年の総括といたします。ありがとうございました。
グロービス経営大学院 ディレクターの柳田佳孝さんより、結びのご挨拶です。

総合グランプリ・部門賞、そして特別賞を受賞された著者・出版社・関係者の皆様、誠におめでとうございます。「ビジネス書グランプリ」は今年で8回目となり、メディアでも多く取り上げていただき、投票数も過去最多ということで、ビジネス書への関心が高まっているかと感じています。
毎年本グランプリを通して、著者や編集者の皆様とこうしてリアルで携わる機会があることで、書籍への物凄い熱量や想いが伝わってきます。たった1冊のビジネス書が作り手から読み手に届くまでにどれだけの関係者が関わっているかと考えると、こうして共催という形でグロービス経営大学院もその一役を担えていましたら大変嬉しく思います。
近年、「リスキリング」などの「学び直し」が注目されていますが、では一体何のために私たちは学び続けるのでしょうか? それは、やはり「自らの人生を切り開き、より豊かな人生を送るため」ではないでしょうか。
現状維持であれば、学ぶ必要もビジネス書を読む必要もありません。グロービス経営大学院では、今までに1万人を超えるビジネスパーソンにMBAを提供してきました。その際、社会人学生の皆さんにお伝えしている言葉に「一燈照隅、万燈照国(いっとうしょうぐうばんとうしょうこう)」というものがあります。この言葉には、「一つの灯火だけでは隅しか照らせないが、その灯火が万という数になると国中を照らすことができる」という意味があります。
フライヤー社の大賀さんは今回のキーワードを「迷いの中に差す光」とされました。まさに、この時代にビジネス書が、迷いや不安がある中で誰かの一歩踏み出すキッカケとなったり、進むべき方向性を指し示してくれる手引きとなるのではないでしょうか。これからも、著者・出版社・書店など関係者の皆様、そして読み手や投票いただいたビジネスパーソンの方々とも「ビジネス書グランプリ」を通じて、この社会を前向き照らしていければと思います。
登壇者のみなさま、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
全国1400の書店と連携して、受賞作品の店頭フェアが順次開催されています。ぜひ手に取ってみてください!